「記憶する幻想郷」読書感想文4

Opera君の撃沈という災禍に見舞われましたが、久樹の阿求に対する慈愛はそんな程度ではおさまる事を知らない。というわけで記憶する幻想郷考一体いくつまで続くのか。


すっかり興味を失った魔理沙に対して、黙々と幻想郷縁起を読み進める霊夢さん。感心したのか、あんた、妙に妖怪に詳しいのね!とぽつり。何気ない台詞だったようですが、阿求はとても嬉しそう。可愛いねぇ。
阿求答えて曰く。私…御阿礼の子は、千年以上前から妖怪の資料をまとめるためだけに存在していたのです。と言っても、最初は歴史書の編纂をしていたんですけどね。何せ、幻想郷の歴史は妖怪の歴史にほかならなかったので
この台詞は極めて重要です。私も最初見た時はえって思いましたが、よくよく読んでみると、妖怪の資料をまとめるというのは結果論だという事が解ると思います。つまり、幻想郷において必要とされた歴史が、妖怪に関する物だけであった、と言う事。
似たような話は、東方文花帖において慧音も述べています。

で、里で歴史の学校を開いたんですよね?
慧音
開きました。でも、余り人間は集まりませんでした。
それは意外ですね。私達ならそんな面白そうなことが始まれば、我先にと見に行く物ですが。
慧音
それだけ人間は毎日の生活だけで必死なのですよ。あなたたちお気楽妖怪と同じに考えてはいけません。彼らは働くだけ働いてご飯を食べないと死んでしまうのですか。*1

ちなみに、ここの秘密歴史結社というのも、読み方によっては阿求のことじゃねって気もしないではない。この記事が公開されたのが117季であり、幻想郷縁起が公開される4年前の話です。縁起を公開した時点で、阿求は十代前半と見られていますが、とすると、この記事が書かれたのは、ちょうど阿求が幻想郷縁起を書き始めた頃ぐらいではないでしょうか。
実際、稗田家の活動が秘密でも何でもないのは明らかであり、ここは文が例によっていつもの超解釈を華麗にかまし、それを真に受けている慧音という構図で見れば納得出来なくもない。
授業をやるための資料を借りに稗田家を訪れたところで、「え、あの記事ってお前のことだったの?」とか言ってるけーねが幻視出来るところがまたねぇ。

っと、話がそれたので元に戻す。
つまり、阿求が歴史を編纂するのを生業としていたとしても、その仕事によって生ずる利益は主に妖怪対策だったということでしょう。
いや、逆ですね。記録を残し続けることの価値を理解してもらうためには、妖怪対策という大義名分が必要であった。残念ながら、普通の人間というのは記録を遺すことの価値というのを余り評価しません。日本でのアーキビスト*2の地位を見ればよく解りますし、昔であればなおさらでしょう。
また思い出して欲しいのは、幻想郷縁起の執筆は映姫によって認められ、紫によって検閲を受けていると言う事です。映姫様は浄瑠璃の鏡を持っているため、隠し事は出来ません。ということは閻魔様は少なくとも幻想郷縁起の改竄を黙認しているわけです
となると、御阿礼の子との幻想郷での立ち位置というのは一筋縄ではいかないと思います。

ちなみに稗田家が何故幻想郷の里において名家であるのか、という命題は既に自分としては結論が出ているのですが、まあ、これは夏に書く予定なので出し惜しみw 今日はもう全然何にも手に付かなかったので、中途半端ながらこの辺で(^^;

*1:東方文花帖「謎の秘密歴史結社の実態」より

*2:Wikipediaによると永久保存価値のある情報を査定、収集、整理、保存、管理し、閲覧できるよう整える専門職を指す。