西太后とルーヴェリア

西太后と言へば、中国史上三大悪女に数へられるほど評判の悪い王妃である。そしてルーヴェリア・アトカーシャも、同じくイヴァリースにおいて国を衰退させた元凶として描かれてある。が、浅田次郎蒼穹の昴などを讀んでゐると、実は彼女にも彼女なりの理由があったのではないか、といふ妄想が頭をもたげてくる。

教会は、五十年戦争終結の頃から既に獅子戦争へ向けた陰謀の準備を進めてゐただらう。そのためには、オリナス即位に対して異を公然と唱へることが出来る環境が必要だ。

ルーヴェリアの悪評は政治の私物化にある。方針に異を唱へる者から容赦なく地位を剥奪し、諫めた王太后も蟄居*1を命ずる。王太后はその後蟄居先で死亡するが、これについては暗殺との噂が絶えない。

しかしながら、あの頃のイヴァリースにおいて、そもそもまともな政治能力を持ってゐた者がどれだけゐたかは大いに疑問である。碌でもない提案ばかりしてくる阿呆を切っただけかも知れない。王太后に至っては、ルーヴェリアの仕業に見せかけるやうに焚きつけたのではないかとすら思へてくる。

ルーヴェリアの第一子と第二子は夭逝してゐる。これは、ヴォルマルフが言ふには元老院がルーヴェリアを失脚させるための謀殺であったらしい。ルーヴェリアを権力から引きはがすために潜り込ませたオヴェリアすらどこからか調達してきたといふのだから、元老院は相当の曲者である。

この動きに警戒して、ルーヴェリアはオリナスを産んだ*2とヴォルマルフは言ふ。なにせ実の子供を二人も殺されてゐるのだから、ルーヴェリアがオリナスを溺愛・過保護するのも無理がない。

その後のルーヴェリアに関する出来事も、よくよく考へてみれば捏造や濡れ衣の可能性を否定できないことばかりである。オヴェリア誘拐未遂事件(ダイスダーグの謀略を教会が更に利用したウルトラCである)によってベスラ要塞に監禁され、頼みの綱だったラーグ公はあっさりダイスダーグに暗殺されるし、頼りになる存在は誰一人存在しなかった。未公開データにはその後の戦闘で行方不明にとだけ書かれてある。

一方実子オリナスは、未公開データによるとラーグ公が暗殺された後は各地を転々として逃げ回る生活が続く。最終的には呂国へ亡命。とある。

なにやらドラマティックな展開ではないか。ルーヴェリア視点で見る獅子戦争といふのも、きっと面白い話が出来さうである。是非誰か書いて欲しいものだ。残念ながら、私の力では蒼穹の昴劣化コピーにしかなりさうもない。

*1:今でいふ謹慎に近い

*2:本当に産んだのか、調達したのかは不明だが