光学メディアの立ち位置自体が中途半端になりつつあるのでは?

池田信夫 blog 東芝のチャンス

次世代DVD戦争はブルーレイディスク(BD)陣営の勝利が確定的になりさうだが、そもそもDVD自体が過去のものであり、東芝は経営方針を一大転換するチャンスだと言ふ話。

だが、ニコニコ動画が、あれだけ画質音質を落としても日本のトラフィックの12分の1を占め、サーバ資源も限界すれすれで運用してゐる*1といふのに、ディスクを買いに行かなくても、インターネットで映画もダウンロードできる。といふ考へはやや楽観的すぎるのではないか。

一般者が利用する通信速度がもう一桁上がるのも、その厖大な通信要求に耐へられるサーバやシステムが普及するのにもまだ数年〜十数年はかかりさうである。ニコニコ動画が人気と言はれつつも、それでも会員数は500万弱*2。日本の総人口の7.9%弱に過ぎない。高速インターネット通信衛星の打ち上げと商用化が波に乗れば、もっと多くの人間がブロードバンドコンテンツを利用し始める。もし動画配信ビジネスが今後も拡大、更には高画質化を目指すのであれば、インフラの整備がどこまで追いつけるかが重要な視点になるだらう。

ところで、データの記録媒体として光学メディアを求める理由は「容易に書き換えられない」事とと「(HDDと比べて)長寿命、堅牢」の二点であると思ふ。

しかしながら現行DVDの4.7GBといふ容量は、テキストデータはもちろんのこと、写真データや音楽データの保存用途としては十分な量である。久樹のMyPictureフォルダは7.61GB、MyMusicフォルダも10.2GBしかない。10枚組のセット品を買っただけであまってしまふ計算である。

困るのは、高画質で録画した動画や片面二層の動画DVDをダビングしようとしたときくらゐで、焼くためにはどこかを削るか画質を落とすかしなければならない。それでも1番組あるいは数話単位でDVDを焼いていくと手間もコストもばかにならず、結局、大事で劣化させたくない動画データはHDDで保存しようと言ふことになる。

BDが容量単價で現行のDVD並みに價格が下がれば話は別だが、そんなのを待ってゐるうちにHVD*3が実用化され、その頃には技術的に枯れつつあるHDD*4との勝負が始まりさうである。となると、矢張りBDは過渡期の技術として現行のDVD並みの普及は見込めまい。その点に関しては池田氏と同意見である。

2008年1月10日追記

「勝者はBlu-rayでもHD DVDでもなく、ハードディスク」--シーゲイトCEOが発言:ニュース - CNET Japan

一般者が取り扱ふファイルのデータ量と、一般向けの記録媒体容量の増加スピードを考へれば良い。

デジタル動画ですらこれ以上の品質は趣味レベルと言へるのだから、より画期的なデータ形態が生れる(動画は縦横時間の三軸なので、立体動画などが登場すればまたデータ量は爆発的に増加する)までは、当面この傾向は續くだらう。

*1:ニコニコ動画がテレビの座を奪う日は来ない--ひろゆき氏の分析:マーケティング - CNET Japan

*2:「ニコニコ動画」08年4〜9月期黒字化・会員1000万目標 ゲーム・音楽展開も - ITmedia Newsより。 YoutubeやMyspaceVideoなどの利用者数はよく分らなかった

*3:Holographic Versatile Disc - Wikipedia:ホログラム技術を利用した光ディスク。実用化すれば容量1TB、転送速度は1Gbpsに達する

*4:一方、1年ほど前に富士通ITmediaニュース:2010年にはHDD容量は「1けた上」に?なんてニュースを飛ばしてゐたが