東方星蓮船感想

とまあ、委託頒布開始から一週間が経ち、星蓮船のネタバレも解禁になったことなので、星蓮船の感想をつらつら書かうと思ふ。まだストーリーについて完全に把握したわけではないのでファーストインプレッション(第一印象)に近いものと思っていただければ。
さて、日ごろうちの雑記を読まれてゐる方ならご存知だと思ふが、今回うちはサークルの作品「阿求日記 123季1月篇」にて、東方星蓮船*1の大予想をやった。まあ、予想といっても考察スレのやうな真面目なものではなく、キバヤシちっくになんだってーをやりたかっただけなのであるが。ちなみにその概略は

  1. 風神録は風の神様が登場した。
  2. 地霊殿ではにある八咫烏の化身が登場した。
  3. としたら次はに関係する異変が起こるに違ひない
  4. いやまて、海といへば儚月抄では豊姫の『海と山を繋ぐ程度の能力』が登場したではないか。幻想郷は山奥なんだから、これは海のど真ん中に在るといっても過言ではない!*2
  5. さうだ、よくよく考へたら緋想天で登場した天人の気象は極光、すなはち色ではないか!?
  6. 分かったぞ。この三つの「アマ」と「虹」によって導かれる結論はひとつ。次の新作(星蓮船)にはが登場するに違ひない!! 幻想郷は滅亡する!!
  7. な、なんだってー!!(AA略

といった感じ。まあ多少脚色が入ってゐるが、その辺りは実物をお持ちの方の特権といふことで。

そんなわけなので、星蓮船の第一報が出た時には海がかぶってしまったなあと思ったのだが、実際ふたを開けてみると、連れて行かれた場所は天の川でもなければ山奥でもない魔界の地方都市で、しかもご登場したのはなんともハッピーな表情と格好をした大魔法使ひさんでしたといふオチ。さすが神主、斜め上ってレベルぢゃねーぞ。

今まで東方は神道系の話題が多かったが、今回は珍しく仏道系の話題がちらほら出てきた。幻想郷は神仏習合時代の名残(天孤や閻魔王など)をまだまだ残してゐるし、また求聞史紀で散見された神仙思想の辺りも、今後どう設定に絡んでくるのか興味深い。

ところで、今作はけっこう細かいところで今までの慣習が打ち破られてゐる。一番大きいところで言へば1面・2面ボスの返り咲きであるが(ナズーリンにいたってはキャラ絵まで変はってゐるし)、Extraボス弾幕の傾向*3も大きく変はってゐるし、星の通常弾幕や白蓮の魔神復誦など旧作の影響もちらほら見える。

また、地霊殿の頃から見える傾向もある。固い敵が増えてきたことや、Extraをクリアしなければストーリーが完全に解明されないこと、何度も登場する中ボスなどがさうだ。

今ふと思ったが、風神録以降の作品といふのは、何だかんだいって『異変』と呼べるほど大きな出来事は起こってゐない。風神録は神社の騒動だし、地霊殿は怨霊を心配したのはごく一部の人妖で、儚月抄も参戦者以外は何の関係も無いし、星蓮船に至ってはお遊び気分である。

幻想郷中を揺るがすといふ阿求の基準に従えば、花映塚での『60年目の大結界騒動』以来、異変らしい異変が起こってゐないことになる。人間の里視点で見れば、せいぜい昨年の夏に気象が荒れて作物が不作だったといふ程度である。

もちろん、神社が乗っ取られれば結界に深刻な影響があるかもしれないし、お空が調子こいて地上に現れたり、万一要石が引っこ抜かれる事態になったら大異変になっただらう。まあその点、白蓮さんが地上に来てもあんまり騒動にはならなかった気もするが、ひょっとしたら人妖の決闘を見て妙な勘違ひを起こすかもしれない。

異変を起こしやすくすることで幻想郷のバランスを調整するといふスペルカードシステムは、花映塚以降少しづつあり方が変はってゐるのではないか。紅魔郷では外の世界に届きさうになるまで、或いは妖々夢では夏の一歩手前まで、或いは永夜抄では妖怪たちに尻を叩かれるまで放置されてゐた異変は、ここのところやたら手早く解決されてゐる。

妖々夢の頃は「面倒な物が復活したらどうするのよ」といってゐた霊夢さんだが、今回は随分あっさりと復活を許してゐる。実際幽霊の管理者である幽々子の封印が解け、幽々子が消滅してしまうと冥界は大変なことになるので霊夢の感は正しかったのだが、なんとなく風神録以降の話の展開は今までの三部作とは違ふなといふ感じがずっとしてゐる。

その辺りが、神主が言ふところの「リセット」だったのではないかと。

幻想郷を幻想郷たらしめてゐるのは、今も昔も狂ほしいほど激しく美しい弾幕であるが、この変化についてはうっかりしてゐるとすぐ見落としてしまひさうで、つくづく用心が必要であらう。まづは修羅場進行でザッとしか読んでゐないグリモア・オブ・魔理沙を読み返すところから始めようか。



弾幕をかいくぐって動き回るベントラーを回収しなければならない以上、星蓮船紅魔郷以来の(或いはそれ以上の)気合避けゲームとなってゐる。ベントラーの飛ぶ方向は決まってゐるらしいのでパターン化出来ないわけではないやうだが、ボスの動きも妖々夢以来ずっと自機追随だったものがランダムに戻ったり、弾幕自体もある程度目で見て避ける事を要求されてゐる。気合避けが苦手な人には中々辛いゲームではないかと思ふが、パターン化が苦手で気合避けが好きな私はかなり愉しんでゐる*4

一方、星蓮船はまともにグレイズを稼げる場面が一輪先生くらゐ*5なので、グレイズしたい欲は結構たまってゐる。さうなると地霊殿ガリガリ音がより快くなるし、今回の軽やかな感じの曲を思えば、あの重たい感じの曲もいっそう引き締まって聞こえる。風神録を久しくやってみれば、神奈子様と諏訪子様は本当に遊んでゐる感じがして楽しい*6

東方はシリーズでは無い、とかつて神主は言った。だからこそ、版刷りのやうな同じ作品は作らないし、逆に世界観をひっくり返すやうな別の作品も作らない。新しい作品が前よりも全てにおいて上回ってゐるわけではなく、他の作品をやることで、その作品の別の一面が際立ち、楽しみ方を再発見出来るのが東方の特徴では無いかと思ふ。今なほ紅魔郷の密着撃ち込みは爽快だし、妖々夢のスペルカードはストーリーに集約される完全な演出だと思ふし、永夜抄のシステムと背景と音楽の技巧はプレイするたびに舌を巻く。

楽しみ方は人それぞれだと思ふが、東方は幻想郷あっての作品である。自分の中で形作られた幻想郷観を大切にしながら、これからどんな人妖たちがどんな物語を綴っていくのか、三月精などの日常も併せて嗜みながら、楽しみに見守っていきたいと思ふ。

*1:この時点では作品名が公開されていなかった。

*2:この時点では儚月抄は終了してない。

*3:今まではしょっぱなは誘導パターン化系のスペルであった。

*4:いふまでも無いが、全くパターンが不要といふわけではない。少なくともどの時点でどんな敵がどんな弾を出し、どう避ければいいか位は頭に入ってないとお話にならない。それは紅魔郷も同じ。

*5:私は星でグレイズする気にはなれんぞ。あれは老体キラーなんかぢゃない。酔っ払ひキラーだ。

*6:諏訪子様は非想天即で更にはっちゃけてるが。