根拠のない医療を信じる根拠って何なんだらうねぇ
チキンポックス(chicken pox)とは水疱瘡のこと。最近米国では、水疱瘡の予防接種を受けさせず、代わりにわざと水疱瘡に罹患させ、免疫を付けさせようと考へる親が増えてゐるらしい。その理由として、
- ワクチンの中に含まれる保存剤「チメロサール」に自閉症を誘発させる疑いがある
- ワクチンそのものの予防効果が低い(40%程度)
- 水疱瘡は子供の時期に罹患した方が比較的症状が軽い
- 一度罹患した後はほぼ確実に免疫が付く
などが主張されてゐる。そもそも発症に危険があるから予防接種を行ふのであって、病理学的な合理性について今なほ米国内では賛否が二分してゐるらしい。チキンポックス・パーティとは、水疱瘡に罹患した患者の家に未感染者を集めて、意図的に感染を誘発させるための催しである。
しかし、インフルエンザウイルスは変異性が強く、一度罹ったからといって免疫効果は極めて限定的にしか期待出来ない。コンピュータのアンチウイルスソフトが頻繁に定義ファイルを更新しなければならないとの同様である。
加へて、ウイルスが人の細胞内に長期間とどまる事で、より人間への感染に適した強毒性インフルエンザに変異する危険性を増大させうるし*1、もしそうなった場合当然自然治癒が期待出来ないため、免疫を付けるどころではなくなるだらう。
詰まるところ、ことインフルエンザに関して本方法は全く意味が無いどころか、世界中の人間を更なる危険に曝す行為であると言へる。絶対に止めて欲しい。
……ただ、元々かういふものを積極的に推奨しようって人は、ホメオパシー*2などと同じく根深い医療不信を持ってゐる事が多い。単純に自粛を呼びかけただけでは、この方法を実践しようとする人を止めるのは難しいと思ふ。むしろこの話が広く報道される事によって、ただでさへトンデモ科学が跳梁跋扈する日本でも真似しようって輩が出てきさうで恐ろしい。
尤も、その一方で、ハンセン病の時のやうな過剰な排斥運動が起こるのも問題なのだが……。実際先般のインフルエンザ感染者に対する言論を聞いてゐると薄ら寒いものを覚えるし……。