マナーって結局事件がないと育たないものかもなぁ

戦前の列車の中はすっごく汚ないっ! - 虚構の皇国 blog

本記事よりもコメント欄のやりとりが良い。

一番上の写真は、椅子の下に捨てられたゴミを通路にかき集めてるシーンではないでしょうか。
今ではゴミ箱が担う役割を、椅子の足元が果たしていた時期が戦前・戦後の一定の時期まであったわけです。それは「片付ける」べき場所の意識の違いであるように思います。
いつから現在のようなマナーに変わったのかは判りませんが、痰壷が床から消えた時期や、電気ヒーターなどの機器が椅子の下を占領しはじめた時期が変わり目だったのかもしれませんね。
上から2番目のポスターも、『ゴミは雑然と置くのではなく椅子の下に置く』という過去のマナーを踏まえてのものであるように見受けられます。

ゴミを窓から外に投げ捨てるのが当たり前だった時代があって、マナーとして、ゴミは外に投げ捨てずに椅子の下に捨てましょうっていう時代があったのです。

マナーがある・無いぢゃなしに、昔はそれが当たり前だったといふこと。それが是正されたのは、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、置き去りにされた荷物に対して厳しい目が向けられるやうになってから以降らしい*1
本件に限らず、今の常識を捨て去ってみれば、今ほど――それこそ窒息しさうなほどマナー・モラルが叫ばれる時代はないと思ふ。おされのメッカだと言はれるパリであっても、中世の頃は溲瓶の中身を窓から投げ捨て、道路に屎尿が溢れかえるのが当たり前だったのだ。ちなみに、為政者は何度もお触れを出してマナーを是正しようとしたが全く効果はなく、黒死病の大流行によって人口が激減したために公衆衛生観念が向上した。

何が言ひたいかと言ふと、マナーと言ふものは、罰則であるとか、神の見えざる手とかによる是正は全く期待出来ないと言ふこと。

現状、同人イベントにおける徹夜や早朝来場者対策には、ペナルティ、すなはち入場遅延措置が最も有効であり、これを行はなかっただけでイベント主催者が叩かれるなんて事態も見受けられる。

しかし私は、ペナルティで徹夜が無くなるとは到底思へないのである。具体的に目に見える罰則があれば、それさへ回避出来れば徹夜参加者にとってのデメリットが無くなってしまふから。高速道などにおけるオービス*2などその典型例であらう。

一方、啓発や教育で本当に徹夜が根絶出来るか、と問はれれば、残念ながらかなり怪しいところである。

同人にもおいても、たとへば本当に表現に対して慎重な姿勢が見られるやうになったのは、『魔法使いサリン事件』*3や『ポケモン同人誌事件』*4以降であらう。

コミケでも既に何人もの未成年早朝来場者が警察による補導を受けたらしいが、現在のところ改善の兆しは見られない。成人であれば今のところ排除する法的根拠も存在しないのだからなほの事である。それこそ逮捕者が出ない限り是正は難しいだらう*5

しかし、何か事件によって物事を動かすのは、9.11を見れば判る通り、大きな副作用を伴ふ。出来ればさういふ事にはなって欲しくないのだが、現実問題、マナー啓発・教育と言ふのは、問題の悪化を防止する効果はあっても、問題の根本的解決にはなってゐない。

あまり考へたくはないが、その意味では、例大祭5などは東方界隈における「マナー向上運動」を興すのに十分な事件であったとも言へさうである。昔の書き込みを見る限り、今ほどマナーが守られれてゐる時代は無いと思ふからである

さういふものなのかなーと悲しく思ふ一方、失敗の教訓を生かせる『次の舞台』を最低限確保出来る事が守られてゐるのだから、それも一つの経験と見るしかないのかも知れない。だからこそ、私たちはその教訓を生かし、その最低限の基準が常に守られるやう、そして明日をより良いものに繋げられるやう、誠心誠意善処していかなければならないのである。

教育や啓発であると言った運動や、あるいはポーズとしてのペナルティは、その点において有効な機能を持つと言へる。人間は完璧ではなく、事実は何よりも重いものだから。

*1:実際に目にしてゐないので確証は持てない。

*2:ORBIS(自動速度違反取締装置)のこと。大幅な速度超過をしながら走行する車両を自動的に撮影する装置。

*3:同名の題でサリンに関する本も作ってゐたサークルが、オウム真理教関係のチラシを配布しやうとしたため、主催者側から警察に通報され、逮捕されるにいたった事件。本来の逮捕事由はサバイバルナイフ所有による「銃砲刀剣類所持等取締法違反」と無修正ポルノ所有による「猥褻物販売目的所持(刑法175条)」であり、頒布物そのものは法令に違反するものではなかったのだが、マスコミには前者の内容が問題視され、過剰な『オタクバッシング』を巻き起こす事になった。

*4:とある18禁同人誌が任天堂により著作権法違反で告発され、作者が逮捕される事態となった事件。詳細はポケモン同人誌事件ポケモン同人誌事件 - 通信用語の基礎知識などを参照

*5:そして、よほど問題を起こさない限り逮捕は無いだらう。まじめに並んでゐる限りは、球場等の徹夜と法的な区別が付けられないからである。最もあり得るシナリオとしては器物損壊容疑が考へられる。