幻想郷と四重結界

結局今日も呑んでゐるが、今日は祝ひ酒ではなく普通の酒なので良しとする。
昨日の課題としてゐた二次創作の基準ですが、今までの発言等を踏まへて解釈すると、概ね次の二点が挙げられるでせう。

  1. 公式を名乗らない、公式と勘違ひさせない、公式データを流用しない事*1
  2. 派生物は全て「同人」の枠内で取り扱ふ事

この二点を遵守する限り、「ほぼ何やっても自由」といふのが現在の見解と思はれます。ここでの同人の定義は、「商業流通に乗らないもの」といふ、明確な線引きが出来る中では最大限「ゆるい」解釈です。
また、一部が主張する「二次的著作物と二次創作は別」といふ説が仮に真だとしても*2、同人CDとしてアレンジ曲を頒布することには何の問題もない、といふことが確定したといへます。

一方、商業流通に関しては神主としても明確な線引きをしかねてゐるやうです。幻想伝承では(非公式であることを前提に、許可を取れば)二次創作者がそれで良ければ、「二次創作者がつくっているもの」の商業化を止める事は僕には出来ないし、することもない。と明言してゐますから、神主に直接問ひ合はせなければ白黒は付けられない、といふのが自分なりの結論です。
演奏会などにしても、神主がゲストとして出演したり、トークしたりしてゐる以上、それ自体が問題になるとは考へてゐないやうですが、これもまだケースバイケースと言ふべきでせう。

また、ニコニコ動画などにおける「演奏」*3「アレンジ」「編曲」はこれで白になりました。ただ、音楽を抽出してそのままメドレーなんてのが黒なのは言ふまでもありませんが、プレイ動画……取り分け攻略動画について今回言及されなかったのは少々残念ではあります。リプレイの動画化は今のところNGといふのが基本解釈ですが、これについても、事情を説明した上で許可を求めれば、許可が出ないとは限らないかなとも思ひます。……許可を取って欲しいなぁ……*4


さて、ここまで神主が同人と商業の立ち位置の違ひに拘る理由はこれまでの神主の発言を見てくれば明らかですが、一方で二次創作のほうがもう巨大かなだし、それは手おくれの印象さえあるといふ話も出てゐます。
以前長々と語ったやうに、東方の本質を同人たらしめてゐるのは、神主が同人としての境界をしっかりと堅持してゐるからです。
言ってしまへば、現在の公式情報(作品)といふのは、東方界隈における「神域」なわけです。例へ神社の周りが世俗化・形骸化しようとも、神域の神域性は不可侵のままです。幾ら周囲の人が公式と非公式を混合視しても、それで公式と非公式の境界が無くなる事は(客観的に見れば)有り得ないのです。神主がそれを認めない限りは*5 だからこそ、全てのファンはどんな状況であっても公式を拠り所に出来る。例へブームが去ったあとであっても。

神主が公式といふ「神域」を常に自分の制禦下に置こうとしてゐるのは、東方の本質を外からの干渉によって歪めさせないためでせう。確かに、人気が出れば色々なメディア戦略に打って出て、より人気を広めようとするのが「常識」なのかも知れません。ですが、商業化すれば様々な権利問題が発生して、自分の思ふ通りには行かなくなる。それも「常識」です。

それに対して、同人とは本来非常識*6なものであり、東方は神主の同人作品であり、神主が好きなやうに作ってゐる。私達はその恩恵に与ってゐるに過ぎません。例へ種々の発言やガイドラインによって形式的なものになったとしても、この関係を維持していかなければ東方の未来は暗いものになってしまひます。

昨今は東方の本編をよく知らない人が東方に触れるやうになってきました。それはそれで良いと思ひます。STGだけが東方の本質ではない。少なくとも儚月抄や緋想天といった作品を公式として送り出してゐる以上、STGだけが東方ではないのは事実。逆に言へば、キャラたちだって東方の一つです*7

匙加減が難しい中ではありますが、何とか創作の幅を狭めないやうに今の関係を維持しようと思案した結果が、今回出だされた「商業流通に乗せない」事と「非公式の明言」であったのではないかと思ふわけです。苦肉の策のやうに見えますが、存外、今の状況では最善手であるやうに私には思へます。本当に東方を(非公式含めて)自分の思ふ通りにしておきたいのであれば、二次創作なんて許可しなければ良いのですから。
だからこそ全ての――とは言はずとも、さういふ事情を知る全ての東方を愛する者は、この同人のポーズを大切にして、これからも創作を楽しみ続ければ良いのだと思ひます。
……まあ、以上はあくまでも勝手な想像に過ぎないわけですが、一つの考察といふことでよしなに。

長々まとまらない話をした上での結論

だからね、幻想郷には四重の結界があるんだよ*8。博麗神社が維持する「常識と非常識の結界」と、八雲 紫が維持する「幻と実体の結界」、そして神主が維持してゐる「公式と二次創作の結界」

……え? 最後の一つ? そりゃあんた、麦酒に決まってるぢゃないの。
「酔狂と素面の結界」
これが幻想郷では一番強いのさ。素面で叩きなんかやってる人間にはわかるまい*9

*1:エンディング以外のセリフ集・スナップショットを除く

*2:法的には違ふさうです二次創作物 - Wikipedia参照。

*3:ニコニコ動画自体は商業流通ではない。

*4:それでも、叩きたい人は叩くでせうけどね。

*5:だからまあ、俺魔理沙ぐらゐで界隈を叩き出されるなんて莫迦莫迦しい事態も起こるわけですが。

*6:常識的ではない、といふ意味での話。

*7:儚月抄でダラダラとスペルカードルールについての説明が「今更」あるのは、そのところに意識があるからではないかと私は考へてゐます。

*8:四重が「始終」に通ずるのはいふまでもない。

*9:良いのかよこんな結論で(^^;