年を食ふとは、不思議な表現だ。類義語に「年を取る」「年を拾う」「年を重ねる」などとあるが、何れも取得することにちなんでゐる。
歳月といふものが、ある意味誰かからの贈り物なのかも知れない。頼んでもゐないのに送られる贈り物。子供の頃には有難かったが、段々疎ましくなり、今まで拾って来た重みがずしりとのしかかってくる。捨てるに捨てれず、重みに耐へかねて腰を曲げれば「寿」*1となり、ついにはめでたく天の定めを全うすることになる。何がめでたいのかはよく解らないが。
同じ腰が曲がるにしろ、年と脂と酒なら、私は酒を取りたいなぁと思ふ。生と死の幻想はそこに無いが、无寿の夢くらゐなら見られるのだから*2