ネットイナゴは現代の王蟲なのかも知れない

……と、今日お昼頃に急に思ひついたのだけど、流石にこんな凡人の思ひつくことくらゐ、既に誰かが書いてゐるわけで。以下適当に戯れ言。

王蟲は決して傍若無人な人類の敵ではない。瞳の青い冷静な時は、「個にして全、全にして個」とナウシカに説くほどの理性を持つ。

多分、ネットイナゴと化した人たちも、ネット以外での場では、或いはネットでもその炎上地以外の場所では、とても穏やかで冷静な人たちなのかも知れない*1

だが、何か心の琴線に――自分が大切だと思ふこと*2に――触れてしまった時、瞳は烈火の如く燃え上がり、同じ怒りを共有する者たちと共に相手を滅ぼしに行く。正義の錦を掲げ、(どういふわけか)議論する時は「罵詈雑言を述べて相手を徹底的に攻撃しなければならない」といふ不文律があるらしく、端からとても攻撃的に突撃する*3

押し寄せる王蟲に対抗するため、相手もまた巨神兵*4と言ふ武器を使ふ。だがそれでも、王蟲を止めることは出来ない。

劇場版ナウシカがさうであったやうに、必ずしも相手が本質的に悪とは限らない*5 だが、王蟲達にとってそんな事情は知る由も無く、相手を殺し、破壊し、蹂躙し、そして王蟲自身が朽ち果てた時*6やうやく全てが終はる。

その後その地は腐海の森に沈み、全ての毒を結晶化した後に再生の地として蘇る。だが、その清浄の地を人が生きていくことは出来ない*7 生き残った人たちは「王蟲に逆らったのだから仕方ない」と震え上がるだけで、事態は何も解決せず、何も良くならない。

ネットイナゴに蹂躙されたブログは多くが閉鎖し、作者は社会的な制裁を受けて殺される。後には何も残らない。それを見て他者曰く「あんなことしたんだから仕方ない」*8

ジル*9はかつてナウシカに「人と蟲は同じ世界には生きられない」と説いた。だが腐海王蟲も人が造りしもの*10であり、ネットイナゴは人そのものである。なにより、この世界にナウシカはゐない。

一体どうすれば良いのだらう。いや、そもそも私はこの話をどう評価すれば良いのだらうか。

宴会帰りの呑み直しとして7合目の酒を手酌しながら、そんなことを考へた次第である*11

続いてゐるやうで続いてゐない:道徳的潔癖症について

*1:例えばタミフルの件における村民の反応

*2:よく見てゐるアニメだとか、昔いじめに遭った経験とか

*3:この村ではDisると言ふらしい。

*4:Disり返しとかIP拒否とかコメント欄閉鎖+反撃記事掲載とか

*5:風の谷の人達にとっては、帝国同士の謀略に巻き込まれただけである。

*6:匿名の命は陽炎のやうにその場限りである。

*7:これは漫画版7巻で明らかになる事で、その世界の人間は、ある程度の毒がある場所でしか生きていくことが出来ないやうになってゐる。

*8:落書き事件はイタリア人の感銘を誘って一定の救ひを見たが、その一方で辞任させられた高校教師がゐることも忘れてはならない。

*9:ナウシカの父親。

*10:これも7巻で明らかになる。

*11:書いてるうちに8合目だが。