09年衆院選雑感

この記事は誰かに何かをいふためではなく、4年後の自分に対して今の自分がどう考へてゐるかを書き記すためのものである。


さて、私は今回の選挙について「思ったより民主が勝ったな」といふ以上の感想は持ってゐない。民主が圧勝する事はほぼ確定路線だったし、私も基本的には政権交代を支持してゐたからである。

日本の経済は戦後の復興期から発展期、安定成長期を経て、90年中盤に停滞期に入った。経済が停滞すれば格差が固定され、閉塞感が生じて改革気運が高まる事は歴史的にも見られてゐる。

実際、1993年の第40回衆院選では新党ブームが巻き起こり、既存政党である自民党社会党はどちらも(社会党はより大幅に)議席を減らし、野党の総連立の結果、細川内閣が成立した。とはいへ、政治改革について一定の成果を上げるものの、多連立による不安定さによって、次の羽田内閣と共に短命に終はり、混乱が収束することなく(選挙も無しに)政権交代され、自社さ連立政権による村山内閣が成立する。

が、こいつは割と良い事もやったし、まああの当時は仕方ないんだらうといふ事情も酌みはするが、個人的には某地震の対応ではっきり言って嫌ひな奴である。

その後の96年の第41回衆院選挙では経済的には行き詰まってゐたにも関はらず、特に大きな政変は起こらなかった。新進党と、直後に結成された民主党の票が割れたのが要因だったやうな気もするが、はっきり言って当時小学生だった私が覚えてゐるわけがない。

2000年の第42回衆院選も結局よく覚えてなかったりする。当時の森首相が神の国発言をやらかしたりと低支持率路線だったやうな気もするが、結果を見ると与党が無事に過半数を維持してゐる。考へられる可能性としては、この頃はまだ野党支持層が分裂してをり、一方の公明党の支持基盤が異常に強固だった位しか思ひつかない。

とはいへ、その後も森内閣は低迷が続き、ITバブルなど、特定の産業に依存した特需こそあったものの、全体的には成長間に乏しい状況が20年にも渡って続いた。その間、民主党以外の野党はどんどん議席を減らし、新党ブーム以来の二大政党制への回帰が潮流となった。

私は、03年の第42回衆院選の時点で、既に政権交代があってもをかしくなかったと思ってゐる。しかし、ここで登場した小泉内閣が「構造改革」路線を全面的に展開し、政権交代の勢ひを生かし切れなかった。

その後も自民党では度々不祥事が起こるが、そのたびに民主党側にそれ以上の不祥事が起こる*1ことで、自民党以上に民主党が駄目だといふ見方が広まり、その上小泉改革の最大テーマであった郵政民営化を「抵抗勢力との戦ひ」と称して大々的にぶつけたことで、05年の44回衆院選は旧来の保守組織票に加へてリベラル層まで根こそぎかっさらって大勝した。

とはいへ、小泉氏の改革は基本的に政治改革と経済改革であり、それも規制緩和自由経済主義路線であった。ただでさへ「失われた10年」で格差が固定しつつあった中での経済改革は、言ふまでもなくそれまでの格差を拡大させ、政治改革による福利厚生施策の縮小は支持層を大いに落胆させた。小泉氏が退陣した後の安倍氏、福田氏、麻生氏が軒並み中途半端に保守主義的な立場を取ったのも、改革派の離反に拍車を掛けただらう。ゆゑに、20年来の迷走した改革圧力が民主党に集中する結果となった。

折しも第二次世界恐慌によって世界的に新自由主義経済の行き詰まりが叫ばれてをり、米国でも政権交代が実現した。他方、自民党は改革派の支持を完全に失ひ、おまけに地方土建屋や農業層、医師会などの組織票も宣言通り「ぶっ壊して」しまったのだから、何をどうやったところで大敗は既定路線だっただらう。麻生氏は若い人の支持を期待したのかもしれないが、そもそも若年層の投票率と人口比率を考へれば影響力などたかがしれてゐるし*2、少なくともネット上は児ポ法関連で批判も巻き起こってゐる状態だった*3

まあ、だからこそ私は結局旧与党側に投票したのだけれど。いくら政権交代を希望するとはいへ、さすがに民主が単独で衆院の2/3以上を獲得してしまふ事態は後々の禍根となりさうだったので、少なくとも影響力を残せる位には議席を残しておく必要があると判断したためである。

結果的には、ほぼ目論見通りだったかなと思ふ。民主党が今後政策を巡って分裂する可能性は高いが、来年の参院選で揺り戻しによって再びねじれ国会に突入する可能性があるので、少なくともそれまでは持ちこたへさせるだらう。といふかしてくれ。政権公約ったって、政権が短命に終ったら何の意味もないんだから。

最後に公明党だが、その前の都議会選で堅調だった割には落ちたなと思ふ。与野党問はずしばしば言はれる「国政と地方政治は違ふ」といふのが皮肉に現れた結果ではないだらうか。

そもそも、この政党の最大支持母体が労働者層を中心としてをり、政権与党としてキャスティング・ボートを握っておきながらこの体たらくなのだから、支持離れを起こして当然だと思ふ。あとまあ、世代交代でも進んで昔より影響力が少なくなってゐるのかもしれないが、あんまり突っ込むと怖い事になりさうなのでこの辺りにしておく。


といふわけで、お迎へが来てなければ4年後に逢ひませう > 自分
今の私は今週末の原稿の事で頭がいっぱいなのですよ……。

*1:まあ、このサイトは多分に持ち上げすぎてるけど。

*2:と言っても、投票しない事にはお話にならないのだが。

*3:他方、児ポ法反対派だった保坂展人氏が落選してゐる事を考へると、そもそも児ポ法そのものが論点として成り得なかったとも言へさうである。遺憾ながら。