東方人気投票に投票したのでついでに語ってみた

東方Wiki主催で行はれてゐる第6回 東方人気投票に投票してきた。期日は明日までなので、まだお済でない方はお早めに。
さて、色々迷った挙句、久樹の投票結果は以下の通りとなった。コメント欄に収まりきれなかった思ひなども併せて書き連ねておく。
※Caution:以下電波度200%の妄想文が続きます。

キャラクタ部門

稗田 阿求(一押し)

幻想郷の知識人である我らが阿求。もちろん、彼女を主人公に本を出すくらゐなのだから愛着があるのは当然なのだが、かういふ「書く」といふ行為はより相手を知らなければならないので、そのために深く何度も読み込んでゐるうちにさらに愛着がわくのもまた、当然の話である。なんといふ正のフィードバック。これって恋?
それはともかく、私にとって阿求は気楽に幻想郷を楽しんでゐるといふイメージが強い。しかし、人と妖怪の関係が変はりつつある中で、阿求は自分の生き方を、その名の通り自分で求める必要に迫られるだらう。

森近 霖之助

幻想郷の知識人その2。ネタにされがちであるが、彼の想像力には学ぶべきことが多い。彼のやうな生き方をすれば人生はもっと楽しくなるに違ひないと思ふ。
考察とは自分と世界を繋ぐ解釈であり、考察が深いといふことはそれだけ世界を深く解釈してゐるといふことだ。眼が良ければ世界を明瞭に見渡せるやうに、想像力が高ければそれだけ世界は面白い一面を見せてくれるだらう。といふわけで早く単行本出てくれ〜。

西行幽々子

本来亡霊なのだから未練たらたらの筈なのに、それを微塵も感じさせない余裕は紫のそれを上回ってゐる。それが生来の彼女の性格なのか、西行妖の封印がきっかけとなったのか、それとも桜の持つ妖しい魔力の所為なのか。
ところで食欲が強いといふのは、仏教的には所謂「餓鬼」のやうに欲望の強さの表れでもある。桜は根の元に死体を持ち、その血(罪)を吸って紫の花を咲かせるといふ。幽々子はその身をもって西行妖を封印してゐるわけだが、では、それまで妖の根元に眠っていった者たちの罪はどうなるのだらう。
幽々子が好む雅さや強い食欲や、或いは見事なまでに植ゑられた庭の桜の木々達は、共に封印された者達への無意識のうちの慰めなのかもしれない。そんな想像はどうだらうか。

八雲 紫

誰よりも深く幻想郷を愛するがゆゑ、最近誰よりも空回りしてゐる感のある彼女。
日本神話において最初に『境界』を操作したのは誰かといふと、おそらく黄泉とこの世の間にある黄泉津平坂に石垣を築いた伊邪那岐命であらう。その伊邪那岐が冥府から逃れた際の禊によって生まれた三神が、天照大御神月読命、そして「八雲立つ〜」の歌を詠んだ建速須佐之男命である。建速須佐は傍若無人で有名であるが、勇猛であるし、知恵もあり、また死んだ伊邪那美に逢ひたいと涙を流すやうな一面もある。
例へば永夜異変は月を沈めぬ為に起こした異変だが、人間にとっては「夜が明けない=太陽が昇らない」異変であり、天岩戸神話を髣髴させる。弾幕祭りで出てきたのは太陽ではなく月のお姫様であったが、そこが幻想郷らしいのかも知れない。或いは、伊邪那岐が築いた石垣を「幽明結界」と看做せば、彼女が春雪異変以降幽明結界を修復しようとしない理由もそこに隠されてゐるやうな気がする。
さあ、草薙の剣をもった霖之助とのフラグは立ちまくりだ! いよいよ霖之助が本編へ華麗にデビューする時がやってきたのだ! ……とか言ってみるテスト*1

宇佐見 蓮子

マエリベリー=紫説は随分前から提唱されてきたが、では仮にさうだとすると蓮子は誰なのか、といふ疑問もまた随分前から議論されてきた。物理学といへば最終鬼畜夢美先生であるし、能力的には咲哉や輝夜に近いし、外見的には衣玖そっくりだが、いづれにしろメリー程の説得力がない。
ふと今思ったのだが、月を見たら位置がわかるといふところに何か隠されてゐるのかも。普通は逆だし。幻想郷にとって月光は太陽光線の偏光であり、狂気と魔力の源であるのだから。波長……うーむ。

音楽部門

永遠の巫女

神主曰く原点である。神主の原点といふことは、すなはち幻想郷の原点である。暗く激しいピアノの中で鳴り響く雷鳴と豪雨は、求聞史記の龍の項を思はせる。

童祭 〜 Innocent Treasures

夢は良いものだ。人生をより良く生きるコツは良い夢を見続けることであらう。神主の魅せる夢は、我々の人生を確実に良いものにしてくれる。

最も澄みわたる空と海

旅の終はりの心情を想はせる一曲。旅の終はりとは、日常への回帰である。ヴァーチャルから現実への回帰も同じなのかも知れない。聞いてゐると何も考へられなくなるやうな名曲。

Demystify Feast

発狂ピアノでテンションのギアがガンガンあがる。引き千切られさうな程の緊張感は、締切直前などに聞くといろんな意味で精神に失調をきたしさうになる。まさにLunatic。

U.N オーエンは彼女なのか?

神主の曲が持つ「暗さ」「儚さ」「幼さ」「深さ」「力強さ」の上に「恐ろしさ」が調和された一曲。笑ひながら喉元にナイフを突きつけられてゐるやうな、理解しがたい、息苦しいまでの不気味さと緊張感がそこにはある。後半メロとサビの間にあるあの一瞬の空白に、フランが歩んだ495年間の何かを感じさせるのだが、さすがにそれは穿ち過ぎだらうか。
余談だが私の住む神戸の街には、今なほ『5:46』の過去を刻む時計が幾つもある。

幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜 Border of Life

桜の散華が罪ある魂の浄化であるとすれば、桜は大いに咲いて大いに散らなければならない。安らぐやうな調子と激しく激しく昇りつめるやうに進む調子は、桜の花にこめられた幽々子の思ひを感じさせる。
もちろん、満開にさせてはいけないのだ。幽々子くらゐ知恵が回る者であれば、春を集めれば幻想郷がどうなるか、その結果何が起こるかくらゐ解ってゐただらう。つまり幽々子は、西行妖の花を咲かせたかったのと同時に、完全に開花してしまふのを止めて欲しかったのだ。だからこそ桜よ、幽雅に咲かせと強く願ったのである。

千年幻想郷 〜 History of the Moon

高貴さの中に流れる悠久の歴史を感じさせる。否。歴史とは、そして誰もいなくなった後に残された記録なのだから、不老である月の民に歴史などあるわけがない。あの流れるやうな力強さは、ひとへに永琳の余裕の表れであらう。侵入者も上手く罠に嵌められた事だし、戯れに月の力の片鱗を見せてやらうみたいな圧倒的な余裕。
話は変はるが、Bルートでは永琳が仕掛けた罠がかはされたにも関はらず、何故輝夜はああも余裕たっぷりなのだらう。しかも準備の良いことに台詞と難題まで用意してゐる。須臾のうちに考へたのかといふと、そんな風にも見えない*2 そしてもうひとつの大きな謎が、エンディングBとAとの関係。
それらを総括して考えると、輝夜が時間を差し戻したとするのが最も妥当ではないだらうか。Aルートの最後の「これで負けたらその時は……」の答へがそれだ。そこはまるでテープを巻き戻してもう一度録音してゐるやうに時系列が上書きされてをり、方々に散る刻符アイテムこそ、その上書きされつつある世界の残片なのである!*3
だが、ここでひとつ問題が生じた。もし優曇華の封印の術が完璧だった場合、侵入者は何度来ても永琳の仕掛けた罠の方へ行ってしまふだらう。さうなったら、また同じことが繰り返される。下手すれば無限ループである。だから輝夜は、わざとひとつだけ自分のところに通じる扉を開けておいたのだ。そして侵入者の方も、このまま彼女を追ひかけてはいけないことがなんとなく頭の片隅に残ってゐた。
ちなみに、侵入者達がそのことを覚えてゐるかどうかは重ね合はさった状態で物語は進行する。どちらかの選択肢を選んだ時点で、残りの可能性の世界が消滅するのだ。所謂「シュレーディンガーの猫」である。月読が量子状態の重ね合はせに地上人が気づいた事に驚いてゐるところからも、月人はずっと複数の時間を重ね合はせてきたのだ。幻想郷縁起にもさう書いてあるではないか*4 千年幻想郷の高貴さの裏には、幾重にも重ねられた月人たちの時間軸が込められてゐるのである。
ところで時間を巻き戻すといへば、紅魔郷Easyモードの咲哉女史の台詞をまた思ひだすべきなのだが、流石に音楽との関係が全くなくなってきたのでそろそろ自重しておく。

余談

他にも「神話幻想 〜 Infinite Being」「幽夢 〜 Inanimate Dream」「上海紅茶館 〜 Chinese Tea」「天空のグリニッジ」「紅楼 〜 Eastern Dream...」「ネクロファンタジア」「月まで届け、不死の煙」「彼岸帰航 〜 Riverside View」「芥川龍之介の河童 〜 Candid Friend」「信仰は儚き人間の為に」「ハートフェルトファンシー」「業火マントル」など投票したい曲はいっぱいあったのだが、泣く泣く断念。
ともあれ、東方は良いゲームです。それだけはガチです。

*1:言霊言霊。

*2:あー、でも、須臾の間に「どどどどどどうしようえーりん!」って泣いてる輝夜も捨てがたい……うん。どう考へてもSUTEKI WARSの読みすぎだな。

*3:といふことは、ループの一番最初の世界には刻符アイテムが存在しないことになるが、もちろんそんな世界はとっくの昔にデバッグ済みである。博麗神主によって。

*4:まあ、あれは阿求の予想だけど。