ニコ動のMAD削除と申請者公開と消極的看過について

ここ最近東方動画ばかりでMADは見てゐないなと思ってゐたが*1、そのMAD作品*2が削除されることになったさうだ。

ドワンゴは3団体からの要請を受けて著作権侵害対策について協議し、同社が(1)これまでに投稿された、3団体会員企業の著作権を侵害した動画を削除する、(2)新規に投稿される動画も監視し、著作権侵害があれば速やかに削除する――ことを提案。同意・確認した上で3団体に申し入れ書を提出し、受領された。

これに対する界隈の反応は「ニコ動オワタ」一色だったのだが、これに関連してゐると思はしき仕様変更が昨日公表された。

動画削除時の仕様について、要望掲示板などで様々な要望を頂いておりましたが、『権利者申し立てによる動画削除の場合、権利者名を表示する機能』を、7月5日午後に実装を予定しています。

権利者名表示の対象は、本機能の実装後、『権利を侵害、または権利者からの申し立てによる動画削除』の場合。表示箇所は、動画再生画面外の動画説明文のエリアとなります。

権利者名表記については権利者が「法人・団体」の場合「法人・団体名」、権利者が個人の場合「個人の権利者の権利を侵害しているため、又は申し立てがあったため削除されました」という表記になります。

この仕様変更に対する反応として典型的なものが二点あがった。

両方とも一目で判る煽り記事であり、各記事のブコメも分かり易く、反応の俯瞰にはちょうど良い。

筆者は、この機能が実装されたところで、削除動画にある「運営氏ね」がせいぜい「○○(権利者の名前)氏ね」になる程度と予想してゐる。不買運動だとか、さういふところにはまづならないだらう。なるぐらゐなら、とっくの昔になってゐるはずである。

だが、全く効果がないとも考へてゐない。どちらかといふと、これはMAD等の消極的看過と言ふ点で意義深いのではないかと思ふ。あくまでも「看過」であって「認可」ではない。

申請者が公表されるとすれば、ほぼ間違ひなくどこかにまとめサイトが出来て、そこで各社の姿勢や判断基準が蓄積されていくだらう。一方、「著作権の侵害は侵害だけど、みんな盛り上がってるみたいだし、まあ問題がなければいっか」といふ権利者が仮にゐたとすれば、申請さへしなければその動画は削除されず、相対的に「ここは削除基準が緩い」といふ認識が出来ることになる。

今まで、「MADも良し」と公表してしまふことは、「どんなMADでも認められた」といふ誤解を与へてしまひかねない危険をはらんでをり、権利者としてはとても渡れない橋だったと思ふ*3。以前の初音ミク卑猥動画削除騒動も、後から「これは駄目」といふことのリスク*4を良く表した。

申請がない=容認では決してない。しかし、先の点で言へば、下手に基準を明示せずにグレーゾーンを残しておく方が、可否の選択権を留保出来る分権利者にとっても利点があるだらう。今までもある程度の認知はあったが、はっきりと明示化されたことに今仕様変更の意義があるのではないかと思った。

但し、NGの場合に一々申請する負担を負はせてしまふ問題は依然として残ってをり、企業であれば「申し入れ」のやうな形で運営に一律削除を任せる方法もあるが、個人の場合は難しい。この点を解決しない限り、まだまだニコ動が受け入れられる日はほど遠いだらう。

……まあ、最大の問題は、ニコ厨がそこまで空気読めるとも思へないといふ点なのだが……。


二次創作容認の東方本家といへど、ニコ動については「本作リプレイ動画」の問題を抱へてゐる。普通のプレイ動画*5は残念ながら遠慮すべきと思ふが、「初心者向けクリア解説動画」は、動画で補足が入りつつ見られる分、リプレイと攻略サイトを比較するより断然解り易いのである。

とは言へ、侵害と言へば侵害。音楽もだだ漏れであるし、他所様の絵の転載があったりなど、そのままで良いとは言ひ難い。無音グレースケールならOKとかいふ基準があればよいのかも知れないが、それこそ横柄なファンの我儘といはれても仕方ない*6

あと、後者の記事の東方などの例外を除けばMADなどの二次創作を見る人間は、原作が好きなわけだ(中略)東方のように二次創作から原作に入るこいつのようなニコ厨にはこのあたりの事情が理解できないんだろう。といふ下りは、煽り記事と認識しつつも、いち東方ファンとしてそれは偏見であると指摘しておく。

*1:ランキングも個人的に面白いもの見あたらないし。

*2:アニメ等を切り貼りしたモノ

*3:昨今のWebにおいて、自由は常に暴走の危険をはらんでゐる

*4:まあ、件の時は元々約款に書いてあったのだが、実際に指摘したのは〜といふ意味で。

*5:これは神主が明確に禁止してゐる。

*6:試しに一度作って問ひ合はせるのが一番正道だと思ふが……。