商業の歪みと同人の歪み

一部の出版業界の酷さは、気象精霊記騒動*1の時に少しだけ調べたし、さうでなくとも各地で都度都度語られて来たこと*2だが、ついに行くところまで来たといったところだらうか。

自分は出版業界の人間ではないので、詳しい業界の事情は分からない。そのため気象精霊記騒動の時は、清水氏に失礼とは思ひつつも、「向かうの言ひ分」がない点を差っぴいて見てゐた。しかし、かういった事例がここまで出てくるところを見るに、矢張り業界全体の問題なのだらう。

おおよそ殆どの事件で共通してゐるのは、編集と作家との著しい相互不信である。堅い信頼関係に結ばれたといふ話を聞く一方で、ここまで玉石の落差が激しいのは、作家間の情報共有と配置の最適化が上手くいっていないからだと思ふ。
船場吉兆よりひでえ:小学館(2)次々に出てくる内部告発 - NC-15では代理人制度が提案されてゐたが、それ以前に作家同士で広く意見交換するためのネットワークが必要ではないだらうか*3 問題は、誰が出版業界の古田 敦也になれるか、といふ点だが。


……それにしても、新條氏が本当はあの手の話を描きたくなかったと言ふのは正直意外だった。世間の認識とのギャップは矢張り埋め難いものだと痛感する。
もちろん、(罵倒は別としても)商業である以上、ある程度の作品に妥協や修正を迫られることはある。だからこそZUN氏は東方Projectの商業化に消極的だし、私も1ファンとして望まない。
或いは、昨今指摘されるプロ同人作家の増加は、かういふ風潮が少なからず後押ししてゐるのではないだらうか。今回の件では小学館が槍玉に挙げられてゐるが、前述の通りどこでも似たやうな話は聞く。さういふ業界に見切りを付けた作家が、同人界隈へ今後更に流れ込む可能性は十分考へられる。
となると、商業との関係を模索する同人界隈もまた、新たな時代へ突入することになるのかも知れない。

*1:残念ながら、リンク先に書かれてある別レーベル云々の話は、交渉が更に泥沼化して結局お釈迦になった。

*2:たけくまメモに一部言及有り。

*3:話を見ていると、どうも作家同士でその手の話は忌避されてをり、問題を表に出しにくくしてゐる節がある。