ありとあらゆる情報は現実に影響する

要約すると、先日発生した、青森で自分の親と妹の3人を殺した上に放火した事件で、逮捕された長男のものと思はしき漫画を回収した、それは残虐なシーンが多くあり、動機解明につながる可能性とみて県警が捜査を進めてゐる。と言ふ話。

漫画本は数種類で、人気パソコンゲームを漫画化したミステリー作品は殺人場面が多く、登場人物が刃物で首を切ったり、モデルガンで背中を撃つシーンもあった。作品はテレビアニメ化もされているが、昨年9月に京都府の16歳少女が父を手おので殺害した事件の直後、一部民放局が「事件を連想させる」と放送を自粛していた。

といふ情景から考へるに、これはほぼ間違ひなく「ひぐらしのなく頃に」だらう。何せいま久樹がハマってゐるのだから。

これに対して、各界隈では例によって「またヲタ叩きに使はれる」「フィクションと現実を混同するな」といふ反論が出されてゐる。

ところが、こんな話も出てきた。

タイトルとそうだね、ひぐらしのせいかもね。それが何か? 面白そうでしょう?といふ結論で十分だと思ふが、尤もな意見である。はてブコメントmokemoke2 > 言われてみれば、「キャプテン翼」を読んでサッカー選手になった人もいるんだから、ひぐらしを読んで殺人する子供がいてもおかしくないか。が真実ではないだらうか。

本質的にあらゆる情報は人間に影響を及ぼす。

自殺報道が後追ひ自殺を誘発することはウェルテル効果として認められてをり、WHOは自殺に関する報道のガイドライン[英文][PDF]といふものを公開してゐる(妖精現実でブロガーのための自殺関連記事ガイドラインといふ記事があり、WHOの方もこれにそった内容だらう)

ならば、ありとあらゆる残虐表現を禁じればそれで良いのか。そんなことはない。そんな世界に興味はない。暴力は我々が内包する心の一面であり、否定したところでその事実は変はらない。

ただ、感化されやすい年齢に向けて無防備に発信するのは、高いリスクが伴ふ。だから、一時的に遠ざけておく必要はあるだらう。そのために例の自殺報道ガイドラインがあり、CERO*1ソフ倫映倫など、各種規制団体がある。

現実に殺人事件は起きた。まことに遺憾な話である。その少年がひぐらしを讀み、それに影響を受けた可能性は否定できない。だが、影響を受けただけで誰もが殺人に走るやうなら、とっくの昔に全国で残虐な殺人事件が頻発してゐるだらう。ならば何故その少年は狂気に走ったのか。ひぐらしのテーマである『仲間を信じて惨劇の運命に立ち向かふ』といふ本質を素通りして、その表現手段に過ぎない残虐殺人を犯したのか。真に是正すべきはそこであり、むしろ今回の事件はそのことを改めて問ふただけに過ぎない。

*1:ひぐらしPS2版であるひぐらしのなく頃に祭は、暴力表現があるとして『17才以上対象』に指定されてゐる