『多様性の東方』という時代

なんだかんだいって、結局正月気分をほとんど味わうことなく、いつの間にか明けてしまったところで、つらつらと今年初めの雑文を書いてみようかと。今回はネット上での話はさておいて、イベントとサークルの話を中心に。

まあ、東方界隈が急速に興隆した理由については、各所色々な観点からの考察があるわけですが、自分が一つ、この界隈の魅力を語るとすれば、界隈が持つ『多様性』というところを挙げたいなと思います。

東方に無いジャンルはない

コミケに無いジャンルはない』なんて言われますが、東方もまた『無いジャンルはない』といっていい界隈です。紅楼夢クラスのイベントであれば、どんなマイナーなキャラであれ一つはサークルが参加してますし、その他ジャンルで見ても、チラシ蒐集する人がいれば、聖地巡礼読本が出たり、数独本が出たり、米頒布したり、果ては某ジャンルの超絶エライ人なんてフィギアも出来ました*1
多様性が大きな強みになることは、生物学的にも裏付けされており、それが少なからぬ東方界隈が持つ魅力だと思うのです。

選択と集中の進行

その一方で、ふくらみ続ける界隈に、サークルや一般参加者が疲弊している、という指摘も度々されています。

はっきり言って、一回のイベントで千をゆうに超えるサークルの一つ一つを見て回るなんて、よほど余裕のある人でないと不可能です。コンプリートというのはオタクの一つの行動規範であり、実際大型イベントの度に数万数十万をはたいている、サークル側からしたら神様みたいな方もいます。しかしながら、物理的時間的経済的な制約がある以上、誰しもがそういうわけにもいきません。

となると、やはり目立つところ、本当に欲しいところに選択と集中が起こるのは無理からぬ話でしょう。大手の方々は大手の方々で大変だと思いますが、印刷代どころか参加費すらどうしたものか頭を悩ませる零細サークルはもっと大変です。今年は東方(或いは同人そのもの)から撤退する人も増えるかも知れません。

イベント自体にしても『東方オンリー』というだけでは、既にたくさんありすぎて『コミケ例大祭紅楼夢で十分じゃないか』という話にもなってしまいます。2009年の東方オンリーイベントは最終的に41件となりましたが、募集を満了するところは以前より少なくなりました(それでも普通のオンリーで見れば大成功なんですけどね)

今こそニッチジャンルが活きる時

しかし、逆説的ではありますが、そういった時にこそ、多様性というのが生きてくるのではないかと思います。コミケがあれだけたくさんのジャンルを内包しつつイベントとして成立するのも、多様性の作用が上手く機能しているからだと思うのです*2

多様性の中で重要なのは、自分の存在を知って貰うことです。

人気投票を見ても判る通り、どんなマイナーキャラであれ、それを好きなファンというのは一定数いるのがこの界隈の良いところです。逆に言えば、ニッチであればあるほど、こういう『ジャンル』があるということを、もっとアピールして欲しいなと思います。

前にちらりと書きましたが、先のコミケでは色付配置図でレイセン島と朱鷺子島を新設しました。従来ですと、レイセンは永遠亭組に、朱鷺子は霖之助島に併合していたわけですが、そこを敢えて分割しました。それは、そういうキャラがいる、そういう『ジャンル』がある、ということを内外に明示したかったからです。明示されることによって、そういうのもあるのかという認知に繋がり、上手くいけばジャンルとして定着する道が開けます。

作りたい人は作りたい物を作る。見たい人は見たい物を支援する

Twitterでは度々書いてますが、色付配置図はマイナーキャラサークルへのアクセスを容易にする、というのも大きな制作動機となっています。偉そうな言い方をすれば「マイナーキャラを書いているサークルを応援したい」という気持ちがあるのです。

もちろん、好きなことを好きなように表現するのが同人です。皆と同じ事をするんだという人がいても良いと思います。ですが、もし「他の人の作品と、自分の思いはちょっと違う。だからこれを形にしたい」という人がいたら、それをどんどん積極的にやって欲しいなと思います。

これだけたくさんの人がいれば、どんなマイナーなジャンルでも支持する人は出てくると思います*3 問題は、その潜在的な支持者がそのサークルを発見出来るかどうかでしょう。だから、どうかもっと自分の作品をアピールして、メジャージャンルに埋もれないで欲しい。好きなキャラを好きな話で自由に描いて、それを支持する人とたくさん出会って欲しい。そうすれば、東方の多様性はますます奥深くなっていくことでしょう。

逆に、もしそういうジャンルを育てたい(という言い方だと偉そうですが、利己的に「もっとこんな話が読みたい」と考える)人が居たら、ぜひ積極的に支援して欲しいなと思います。配置図では表記の問題からキャラが中心になって、SSはSS、考察はその他などに分類せざるを得ないわけですが、そういうところは『○○まとめ』というのも良いアプローチだと思います。以下はC77で公開されたまとめの一例。

全サークルをチェックしながらというのは大変な作業ですが、こういうまとめはそれ自体がジャンルを明示する作用がありますし、そのジャンルに興味のある人にとってとても重宝します。有り難い話です*4 まとめが増えたら『まとめのまとめ』を作ればいいわけですし、今年はより一層、情報の整理と整備が進めば良いなあと思います。

こういうところこそ『イベントに携わる人全員が参加者』というコミケット(とそれに準ずる同人)の理念が活きてくるのではないでしょうか。

既存のやり方にも一工夫を

作る側のアプローチとしては合同本が以前からありますが、最近はたくさん増えたので、単なるキャラ合同というだけでなく、ドロワーズ合同や咲夜さんの胸合同など、普通のサークルでは出来ない先鋭化(笑)したテーマでアプローチするのも面白いと思います。若しくは秋姉妹合同みたいに参加メンバーを多様化するなんてのもありですね*5
あんまり斜め上過ぎると誰もついてこれなくなる恐れもありますがw その辺りは同志を増やす努力からということで*6

イベントも、今後は東方オンリーというだけでなく、更にもう一工夫が求められるのではないかと思います。地方開催というのも一つの個性ですし、都市部であればやはり「○○中心」のようなテーマを作るのと、もっと言うなら、そのテーマを参加者全員で共有出来る『何か』があると良いなあと思います。その何か、までは私もまだ見えていませんが、今年は一つあっと驚く企画を期待したいですね*7

但し責任を持って

しかしながら、何でも出来るといっても、今まで培ってきたやり方・セオリーというのも勿論あります。これは特にイベント主催の方に言いたいのですが、型を外すためには、まずは一度その型がどういう理由でそうなっているのか、ちゃんと勉強しなければなりません。

そして、一度やると言い出したことは、ちゃんと最後まで責任を持ってやり遂げて欲しいです。自分一人だけの活動であれば自分だけの責任で済みますが、他の人と一緒にやることについては、その人はあなたを信用して企画に参加していることを忘れないで欲しいです。

ともあれ

現状の表裏だけを見て、やれバブルは弾けただの、乱立して疲弊してるだのと言うのもいいんですが*8、せっかくこれだけ可能性のある界隈なのですから、どうせならもっともっと面白い方向に動いて欲しいなあ。その方が、この界隈がもう少しのあいだ楽しく賑やかでいられるんじゃないかなあ。と、そんなことを思う今年の書き初めでした。

なんかやたら偉そうな書きぶりになってすみません(^^; 自分もまた、これから更なる阿求と幻想の魅力を探求すべく修羅の道へと突き進む所存ですw

*1:逆にエロが少ないと言われてますが、別にないわけではありません。性転換もありゃ霖之助×妖忌×雲山なんかもありますし。

*2:東方ジャンルの拡大でその多様性が脅かされているのではないか、という指摘はあり得ますが、それはまた別の問題なのでひとまず置きます。

*3:当然、程度は違うでしょうが、その辺りは実力もありますので……「阿求冴月」を推す私も精進したいですね。

*4:うちのは適当なまとめでスミマセン(^^; 情報をお持ちの方は自薦他薦を問わずどしどしどうぞ。

*5:但し、話題作り『だけ』のためにやるのは良くないと思います。この辺りはコミケでも同様の問題が起こっていますが、私たちは、作りたい物があるから作っているわけですよね。そこは忘れたくないものです。

*6:ドロワ合同が出来たんだから何でも出来るだろ!

*7:去年の御射宮司祭辺りに可能性があるような気がします。

*8:まるで今の日本の経済評論家みたいだな、とこれを書いて思いました。