稗田阿求の髪飾り考察
稗田阿求は、登場する全ての公式イラストにおいて例外なく花をあしらえた髪飾りを付けている。また、着用している着物についても同様の花弁が描かれている他、幺樂団の歴史3においては一緒に登場する幽霊*1にまで同じ花を着ける徹底ぶりである。
[幺樂団の歴史3 ジャケット絵より]
全て同一種の花と見える以上、この花を付ける事は、阿求にとって何らかの意味があるのではないかと考えられる。ではこの花は一体どの種に当たるのか。
植物学的に見ると、本種は花弁が5枚(中には4枚しか描かれていないものも見えるが、これは1枚が隠れて見えなかったものと解釈する)の離弁・放射相称花冠である事から、おそらくバラ科かツバキ科の植物であると推定される。着物に描かれた葉の網状脈もこの説を支持する。*2
花弁に葉が付いている点(つまり花期は葉が芽吹いた後で、かつ花柄が伸びない)、花弁が白〜紫色でかつ雌蕊が黄色を呈している事から、バラ科であればバラ亜科バラ属が、ツバキ科であればツバキ亜科が最有力候補であろう。
……が、如何せんどちらも古くから園芸で愛好されたため余りにも品種が多く、専門家でもなければ同定するのは不可能に近い。割と頑張ったが、流石に断念した。
なお、秋★枝氏による「記憶する幻想郷」での髪飾りの花は、公式イラストと違って宝珠咲き(千重咲き)であり、阿礼乙女との関連から乙女椿の可能性が高いと思う*3
[記憶する幻想郷より]
また、狩野重賢が著した草木写生(春・上巻)には、山茶(さざんか)という名で極めて類似した絵が描かれているのも興味深い。
或いはナツツバキなどは別名になるほど沙羅双樹に擬されており、輪廻転生の立場から見ると曰くありげである。いずれもツバキ科であることを考えると、阿求の花は椿と見るのが妥当であろうか。
ちなみに全く余談だが、ひさき(ひさぎ)は『楸』とも書く。春と秋はどちらも大好きな季節である。