同人と情報化について

例の東方四国祭騒動について、花羅さんが非常に的確な指摘を入れてゐた。今は難しくても、終った後にゆっくり振り返って、今後に生かして欲しいものです。

まあ、此度の原因の9割位は、後篇で真っ先に述べてられゐる「経験豊かなブレーンの不在」に尽きるでせうねぇ。


例によって以下話は完全に脱線してつらつらと。

情報化の進んだ今日、大抵の疑問はネットで調べれば「答へ」があります。ひと昔前であれば無数の体験談やノウハウ記事なんかを収集する手間もありましたが、今や「まとめサイト」全盛の時代。そこだけ読めば必要な知識の7割くらゐはカヴァー出来てしまふ。

だからこそ調べる人と調べない人の情報格差は広がる一方なのですが、それとは別に「まとめサイト」だけ読めば大丈夫と過信してしまふ人も増えてゐるんぢゃないかなと思ひます。

例大祭参加の心得まとめをやってゐて思ったのは、一度「まとめ」として記事を立ててしまふと、それしか読まない人のことが頭をよぎって、どんどん情報が膨れあがってしまふ傾向があることです。

例大祭5の時に初めて心得まとめを作った時、私が東方初心者だったこともあって、一番意識したのは体験談でした。確かに同人即売会の参加のノウハウを書いたサイトは山ほどある。しかし、同人界隈といふのはジャンル変はれば別世界と言って良いほど空気もしきたりも異なるものです。「まとめ」といふのは「だいたいこんな感じでかうなる」といふまとめ方をせざるを得ない。個々の具体事例については「その時による」としか言ひやうがないからです。

まあ、実際に参加してみると、矢張り全く印象は異なってゐました。見ると聞くとは大違ひ。そこで例大祭6では、自分の経験を元に更に情報を添削したら、減らすつもりが2割近く文量を増やす羽目になった。今年はサークル参加といふ立場に立って、更にまた書きたいことがあることに気づいてゐる。……早い話がまとまんない。

初心者の疑問に全て応へる気負ひで書いたつもりがこの様です。挙げ句の果てに、こんなに長いと初心者は読まないと言はれる始末(笑)――いやまあ、至極尤もです。結局は経験者と一度一緒に行って、実際に体験してみるのが一番なんですよ。その『経験』を前提にしないと、話なんて出来ない。ましてや主催側ともなれば、その大変さ、恐ろしさは想像を絶するものです。

その一方で、情報の共有が進むと、参加者が求める『水準』も上がります*1。たとへば去年の紅楼夢から実施されてゐる、会場面積の余分確保。確かに英断ではあるのですが、これは本来、紅楼夢例大祭並みに「見込みが確信出来る」か、崇敬祭並みに後ろ盾があるから出来る話なのであって、地方の中小イベントで出来る対応ではありません。

でも、やらざるを得ないわけです。やらなかったら、それでもし会場前が飽和して混乱が起こったら、それは主催者の責任にされてしまひます――本来は、そんな時間から挙って集まる一般参加者にも責がある筈なのに。余剰確保は確かに素晴らしいアイデアですが、同時にペナルティと同じ問題をはらんでゐると思ひます。

良くも悪くも情報化。誰かの手際・不手際は簡単に知れ渡る時代となりました。まあ、元々同人界隈は横のつながりが強いので、サークル間において悪評が広がるのは早いのですが、今や全く関係のない人からもヲチされる、叩かれる、最悪潰される。

それでますます各々が情報の提供に消極的になって、ますます参加者同士の相互理解とはほど遠い状況となって……まあ、何が悪いといふ訳でもないと思ふのですが、時代かしらねぇと爺くさい事を考へる今日この頃なのであります。

外は何かと物騒で満足に遊べない、家の中ではネットの向こうの他人の感情を想像しないといけない(これは大人でも難しい)し、間違ったことをただしてくれる大人も居ない、たまに叱るとすぐキレる。今のネットでは子供には厳し過ぎてとてもまともな人と付き合う能力を育めないのかも知れない。

ですが、子供達の心がどんどんと狭くなる一方のこの国でも、もしかしたら街に子供達の笑顔が溢れる日も来るのかもしれないですね。合成で。*2

*1:ああ、ちなみに同じ事はサークル側も抱へてますけどね。下手なら描くなとか酷い時代ですよ(^^;

*2:ZUN − 夢違科学世紀 〜 Changeability of Strange Dream あとがきより